慈チベット愛

チベットが好きすぎるけどチベットを知らなすぎる

チベット旅行 3 青蔵鉄道で葦と化す

ところで

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富士山登頂のために買いそろえたぼうけんグッズ

前提をすっ飛ばしていたが、これはバックパックの一人旅である。

ついでに初めてのひとり海外旅行である。

ちなみに初めてひとりで同じ県内の祖父母の家を訪ねた時は、極度の緊張のため電車内で失神したという大した肝の持ち主。

 

中国語は数年前に大学の講義を1年受けた程度、コミュニケーション能力は赤子にも劣るフリーター(死語)が体験した全4泊5日のチベット旅の記録だ。

 

「チベットって中国語なの?」と思われた方もいるかもしれない。そうなんです。

チベットのコトバについては、回顧録が終わればじっくり見ていきたい。

 

青蔵鉄道の審議

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駅に入場するにはパスポートと許可書を提示する。

ツアー会社に大金を渡し、チケットを受け取る。

521元とある。

元も円も表記が ¥ なのでややこしい。

人民元は 人民币 ren min bi でRMB と書くこともある。

れんみんびーの略だったとは、これを書くまでしらなかった。

 

10月で中国の連休(国慶節)をまたがっているので、珍しいお客もいるかもしれない。

…連休は行くまで知らなかった。

なにも知らない旅人。

 

丸一日ぶんの食料と水を買い込み、人々に紛れて列車へ向かう。

何度も何度も切符を確認して、同じ番号の書かれた車両に乗り込もうとする。

入口には乗務員が立っている。

こわいかおをしている。

ここでもパスポートと許可書を渡してチェックしていただく。

中国語で話し掛けられるが一言もわからぬ。

しばらく考えたのち、乗務員は旅人を入らせてやることにした。

書類に不備があるかと思った…あまり私をビビらせない方がいい…。

 

寝台列車なんてロシア以来だ。

寝台以外は普通の列車ダナ。

 

チケットは三種類ある。

 

・軟臥 いいベッド

・硬臥 安いベッド

・硬座 安い座席

 

わたしは”硬臥”の一番下だ。

三段ベッドになっている。

 

帰りに一番上の席を利用したが、これは避けたほうがよい。

用事のたびに知らない人が寝てるところを邪魔しないようにわずかな足掛かりを使って昇り降りしなければならない。

天井はすぐ上に迫っており、背を伸ばして座ることもできない。

若い健常者でもかなり苦痛だった。

 

軟臥は買ったことがない。

高そうだし、一番下の席で運が悪くなければ(うるさい人に囲まれなければ)硬臥で問題ない。

 

硬座はカオス度が高く、上級者向け。

ぎゅうぎゅうでみんながヒマワリの種食べたりしながらおしゃべりしてる。

 

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通路のイスで即席麺をすする

 

一息ついていると、また乗務員が来た。

用紙に個人情報を書く。

乗務員は注意深く紙を読む。

日本に送り返されるんじゃないかと小さくなっていると、向かいの席の乗客がメモに”请放心(安心して)”と書いてくれた。

むろん意味は分からないが漢字でなんとなく放心状態になればいいのだなと思った。(おしい)

議論に要する乗務員は二人に増え、用紙を見てああだいやこうだと話している。

さっきの乗客もなぜか一緒に用紙を見て議論している。

もう一人ボスみたいな女性乗務員が来て、鶴の一声で私は晴れて乗客として認められたらしい。

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何が原因だったのかは分からないが、これ以降列車のチェックで引っかかったことはない。

 

チケットを預け、引換券を受け取る。

チケットはこっちのもんだと思ってたから、票 ピャオ piao(チケット)だ票だと言われても何を求められてるのかさっぱりわからなかった。

 

青蔵鉄道は人を考えさせる

ようやく落ち着いてお向かいさんと筆談で会話したり本を読んだり窓を見たりラーメンを食べているうちに、時間は過ぎていった。

一人旅といえばヒマそうに聞こえるが、日記を書くのにとても忙しい。

たいせつな作業だ。

このブログを詳細に書けるのは、ちまちま日記を書いていたからだろう。

字が汚いから読み返しはしない。

ていうか読み返すことができない。

 

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車窓の景色は何度見たって綺麗で、見るたびに写真を撮りたくなる

知らない人ばかりでいい大人が延々と人見知りしていたが、例の乗客であるところのおじさんは時折話しかけてくれたり世話を焼いてくれた。

彼は漢民族で、イスラム教徒だという。

友達に会いにラサまで行くらしい。

果てしない鉄道の横には、果てしない道路がある。

2,3日かけてこの道路を車で行ったこともあると言っていたが、途中で大きなホテルとかは見当たらなかった、ように思う。

トイレだってあるようには見えなかった。

ぽつんとごく小さな集落が見えたりするが、人が見えることはほぼない。

たまにバイクがぽつんと置いてあり、持ち主の安否が気になるくらいだ。

 

動くと注目されるので基本的に固まっている。

意を決してカップ麺を持ち、立ち上がるとおじさんは「お湯はあっちだよ」と教えてくれた。

どんだけ優しいんだおっさん。

 

ラーメンはツアー会社の人に辛くないと勧められて選んだのだが、普通に辛い。

あれから何度騙されたことか。

チベット人の辛くないは、ぜってー信じない。

 

辛い辛いと言っていると無口な青年が果物をくれた。

なんか…中国っぽいな。

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高度がどんどん変わっていくので、風景もどんどん変わっていく。

窓の外は山か雪、時々牛か湖。

西寧では薄着でも大丈夫なくらいなのに、山の上は一面が白い雪だ。

途方もない距離だ、とても人の仕事とは思えない。

人気のまったくないところに、赤いスローガンが掲げられていたり、誰かが等間隔に配置され列車に向かって敬礼したりしている。

 

この鉄道は人の言うことを正しいとするなら、次のような話だ。

最初はチベット人の経済を支えることを名目として掲げており、完成すればチベットはもっと豊かになると信じられていた。

命を落とすような危険な工事は、強制的に不当に安い賃金でチベット人の仕事となった。

でも、中国の狙いは他者の利益じゃない。

血の道を渡り、中国人がチベットへ流入するための経路だ。

青蔵鉄道は別名を『侵略鉄道』という。

 

愉快ならざる背景を思いながら、静かにラサへの到着を待った。

 

さー、チベットの明日を祈って寝よう。おやすみなさい

 

 

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